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yours

ジェリーとジャックの話。








 車に戻ると、降りた時の温かさが薄らいでいた。エンジンをかけて、さっそく暖房を入れる。少しは負担を減らそうと、温度設定を低くした。温風が直接当たらないように、助手席に置いたばかりのボックスを後部座席に放り込む。安っぽいその箱は、車の中を移動させるにはそれなりに厄介な程度にでかい。思わず舌打ちをしていた。失敗した。こんなわかりきったことに気付かなかったなんて。




 たった今、俺はジャックにクリスマス・プディングを届けてきたばかりだ。俺お手製のとっておきのやつ。わざわざ一人用の型まで探し出したから、ちゃんとドーム状だ。

 ジャックは喜んでくれているようだった。そこまで料理好きってわけじゃない奴が市販のまずそうなプディングですますつもりだったのは予想通り。食卓に乗ったそいつをほしいと言ったら快く譲ってくれたのも予想通りだった。市販のクリスマス・プディングなんて聖夜が明けても食べ続けるような代物じゃない。

 予想外だったのはジャックが渡してくれたプディングの大きさだった。俺が持ってきたやつの数倍はゆうにある。こんな良き日に出来あいを食べるなんて俺の主義に反するから、店に行ってもプディングのコーナーなんてろくすっぽ見たことがなかったが、それでももっと一人所帯向けのがあったんじゃないかっていう、ただ素朴な疑問が口をついた。

「随分ビッグサイズだな」

 へらへらと笑った俺に、ジャックはただ笑み返した。ひっそりと。

 しまった、と思った時にはもう時すでに遅しだった。俺はメリークリスマスと言い置いて、巨大プディングを抱えてジャックの家を後にした。




 ため息を一つついて、車を発進させる。窓の外には暗闇が広がっている。こんな時間に俺が出かけるのにもご立腹だったうちのプリンセスたちは、さぞやお待ちかねだろう。その幸せにどっぷりつかっている俺は、時々ジャックの寂しさを忘れてしまうらしい。まったく俺としたことがちょっと頭を働かせればわかったことだってのに。

 来年は指輪も入れるかな。





fin


切り分けられた自分のプディングに指輪が入っていると幸運になれるという言い伝えがあるそうです。メリークリスマス

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